見晴らし坂

 小樽運河に向かって観光地として栄える堺町通りを散策していると「ふうど館」の向い側の崖に沿って勾配20度の急な坂が見えてくる。それが見晴らし坂である。

 この見晴らし坂を登った先には、かつて海運業で財を成した板谷邸という立派な屋敷が建っていたため、この坂は別名「出世坂」の名前でも親しまれている。
 実際に私の家族は、私がこの記事を書く以前は見晴らし坂という名前を知らなかったくらい、この名前でも人々に浸透しているようだ。また、その名前から「登ると出世する坂だから、下ると縁起が良くない。」というような噂話を聞いたこともある。

 坂のてっぺんからは、堺町通りを上から一望できるほか、天気が良い日には港や石狩湾も眺めることができる。
 さらに、小樽では毎年7月末に夏の小樽を彩る最大のイベント、潮祭りが開催されるのだが、その間に行われる花火大会を実はこの坂の上からも眺めることができる。会場付近のにぎやかな空気を感じながら見るのもいいが、静かな見晴らし坂から見る花火はそれとはまた違った趣を感じられるものになる。

 また、坂を登りきったところを左に曲がって直進すると、よく見つけにくいと言われる外人坂や水天宮、さらに進んでゆくと花銀と呼ばれる花園銀座街にたどり着く。
 このように、見晴らし坂はいつも沢山の外国人観光客たちでにぎわう非日常の空間から小樽人のありふれた生活圏へと人々を一気に連れて行ってくれる不思議な坂なのだ。

 「坂の街」と呼ばれる小樽にはまだまだ知らない魅力が隠されている。もし小樽に足を運ぶ機会があれば、観光マップに載っているような誰でも知っている観光スポットだけでなく、こうした穴場的な場所で新たな角度から今まで知らなかった、気づかなかった小樽の新鮮な表情を探してみてはどうだろう。

(ぴぴ)