満蒙スーパー

 残念ながら閉店してしまった「満蒙スーパー」のことを最近になってよく思い出す。

 私は、4歳から9歳までの幼少期を小樽で過ごした。当時住んでいた家は緑町三丁目、商大下のゲストハウス付近にあった。家の近くにこれといったお店はなく、母が食材を買いに行く場所は主に少し遠めの緑生協だった。

 当時私が通っていたのは緑小で、一緒に通学していた友人から「昨日満蒙に行って来たよ」という話を聞いて初めて最上町に満蒙というやや変わった名前のスーパーがあることを知り、行ってみたくなった。それは私が小学三年生、小樽を離れる直前のことであった。

 

 当時私は、最上町へはほとんど行ったことがなく、徒歩で行ったことがあったのは緑小の通学区域である緑町と入船町の一部、富岡町を通って小樽駅までくらいだった。

 そんな私にとって、緑町三丁目から当時はなかったグリーンヒルハイツの付近を通って最上町へ行くことは、冒険そのものであった。もちろん、道中に目印やお店は全くなく、道路も今と違い舗装されていなかったような気もする。本当に「満蒙」というスーパーが存在するのか不安だった。

 そんな中で満蒙を見つけた時は、大げさだがまるで秘境にたどり着けたかのような錯覚に陥ったのを今でも覚えている。満蒙があった!というのが大きすぎて、当時店の中の様子は全く覚えていないが。

 

 その約10年後、私は商大生となった。当時ほとんどが札幌から通う「札通生」で、私もその一人だった。入学直後にできた友人は道外から小樽に来て最上町で一人暮らしを始めていた。最上町と聞いて、すぐ満蒙を思い出した。あれから10年、全く行っていなかった。

 その友人の家に初めて遊びに行くことになり、その時に満蒙がまだ存在するのか、一度行ったきりでしかもまだ子どもだったため、あのお店は幻だったのでは、などと大げさに思っていた。ドキドキしながら行ってみると、当時の外観と変わらぬ満蒙があった。

 

 中に入ると、小さなスーパーと勝手に思い込んでいたが、精肉店も入っており何でも揃う大変便利なスーパーであった。友人も大学四年間、食材はほぼ満蒙で買い物するほどであった。

 何と言っても、私と友人が良い意味で衝撃を受けたのが、満蒙には普通のスーパーのようにレジが3台並んでいるのだが、3台とも年配の女性が椅子に座って並んでレジを打っていることだった。あの光景はなかなか見ることができないと、今でもその友人との話に出てくるほどである。

 

 大学を卒業して、たまにドライブがてら天狗山に行く時は、途中で満蒙に寄ってお菓子を買っていた。ところが、7年くらい前であろうか、いつの間にか、満蒙のシャッターが閉まっていた。当たり前のようにあると思っていたのに、閉店してしまっていた。

 

 今でも店舗は使用されておらず、通りは満蒙が開いていた頃に比べて寂しく感じた。それにしても、満蒙という名前はなかなかインパクトのある名前だと当時から思っていたが、どのくらい前から始めたお店なのか、気になるところである。

(hiroe)