電車から見えるもの

大学に入学し、初めて電車で登校した日、徐々に電車が海に近づいていく感覚を今でも覚えている。子どものようにわくわくした。
海が見やすい方はいつも先に席が埋まっていく。私は空いていたら海側を選んで座る。
観光客もそれを楽しみに乗ってくる。観光客はどちら側に海が待っているのかわかっていないから、逆側に座っていても海が見えてくると席を立ってでも海を見ようと移動する。
ある時は海側に座って眠っていたら、カメラのシャッター音で起こされた。それほど電車から見える海というのは珍しいのだ。

ある日、札幌に住んでいる友人が小樽に観光に行った帰りに私にこう言った。「海に突っ込んでいくかと思った。」

最初、私はなんのことかわからなかったが、電車に乗っている時だということで電車からの海の景色のことだとわかった。
確かに、海のぎりぎりを線路が通っているのは少し危ないのではと思ったこともある。一度強い風が吹いている日に波をかぶったこともあった。

海のぎりぎりを走っているから、窓から見ると海だけが見えてまるで海の上を走っているかのように見える。それがまた幻想的な雰囲気を醸し出している。

またある時には、目を疑うような光景が広がる。真冬の朝に人が海に入っているのだ。彼らは波の高い日を狙ってサーフィンを楽しんでいるサーファー達だ。夏も冬も関係なくサーファー達は海に入っている。冬の朝に見かけるときは、正直電車から見ているだけでもこちらに寒さがひしひしと伝わってくる。

海は空のように毎日さまざまな姿を見せる。その日見た海はその日だけの特別な思い出となる。
電車から見える海は、小樽に着くまで人々を飽きさせない一つの観光スポットなのかもしれない。

(今井)