小樽運河の水鳥

小樽運河の近くの堺町通りの橋の架かった小さな川には水鳥がいる。

この水鳥たちは渡り鳥ではないようで、この川に1年を通して生息しており、夏の暑い日には気持ちよさげにすいすいと水の中を泳ぎ、冬の寒い日には氷の上を歩いたりあるいは休んでいる姿も見られる。

しかしここはよく観光客が訪れるメインの運河のところではなく、少し歩いたところにあり、観光客がこの水鳥を眺めたり、エサをあげたりしているというところは滅多に見ない。この川には他にも鯉と思われる魚が生息しており、共存しているのが見られる。

この手の生き物には観光客が勝手にエサをやって、生態系に被害を与えることが多々あり、「エサをあげないで!」という旨が書かれた看板がよく設置されているが、この川には見た限りそのような看板は設置されていない。水鳥たちはいつどの季節にこの川に訪れても、ぱくぱくと上に口を開けるように媚びることもせず一生懸命に生きているのだ。

私がある夏の熱い日に訪れたとき、水鳥たちは飛ぶわけでもないのに盛んに羽をばさばさと広げていた。暫く眺めていると、やはり時折ばさばさと羽を広げて、閉じたあとはすっと水に浸かっていく。私自身水鳥や生物に詳しい訳では無いのだが、きっとあれは熱が篭った羽の中に風を通しているのだろう。人間で言うとTシャツをぱさぱさと動かして空気を入れるようなものだろうか。

また冬のある寒い日に訪れたときには、川には雪が積もり、ところどころ氷が張っているのも見られた。水鳥たちは夏のように水の中に浸かりながら泳いでる様子はなく、川の端の方の雪の積もった場所で休んでいる姿かよく見られた。

水鳥たちもこの小樽の大きな寒暖差に対応しながら、小さな体で生きているのだと感じた。

人間だけじゃなくて、海に近いマチだからこそ見られる水鳥たちの1年は、小樽だからこそ見られるものの1つなのだろうと感じた。

このように、堺町通りや運河を歩く中で、いつもよりほんの少し周りを見渡せば、また新しい発見があり、同じ場所でも歩くたびに違うものが見られるのだと思う。

(nm)