タクシールール

 朝10時、小樽駅にはスーツケースをゴロゴロさせている観光客が、ガイドマップを見ながら行程の確認をしている。そんな観光客の目に飛び込んでくるのは、改札から出口まで続く長い長い列。「これ何の列なの?」と不思議に思うのも無理はない。これは小樽商大生が並ぶタクシーの列である。

 小樽商科大学は山の上にあり、大学への行き方は徒歩かバス、そしてこのタクシーだ。高校の頃の友達にタクシーで学校に通っている、というと「へぇ~リッチだねぇ。」と言われるが、商大生が皆リッチというわけではない。むしろバスよりも安上がりだ。その理由は見ず知らずの4人で相乗りをしているから。

 駅から大学まではおおむね760円。助手席の1人がまとめて支払い、後部座席の3人がその人に200円ずつ支払うというシステムだ。日によってかかる金額は違うものの、後部座席が払うのは一律200円というのが「相乗りタクシー」のルールで、助手席が得するか損するかはその時の運というわけだ。いつからそんなルールができたのか?

 私の父は30年前に小樽商科大学に入学し、千歳から小樽までJR通学をしていた。30年前とは大学も小樽の街並みも変わってしまった部分が多いのだが、この「相乗りタクシー」はそのころから存在していたようだ。私は商大に入学する前に父から「相乗りタクシー」の極意を教えてもらった。

1 常に100円玉2枚を財布の中に入れておくこと

2 降りる前に必ず100円玉2枚があるか確認すること

3 万が一なければ絶対に後部座席に乗らないこと

 この3点を心得て、私は「相乗りタクシー」を使いこなしていたのだが、3年間乗り続けて気付いた暗黙のルールがある。

4 観光客が来たら先に乗せてあげること

 長い長い列を見て困惑する観光客が多い。その様子を見た商大生は必ず列の先頭へと誘導し先に観光客を乗せてあげるのだ。

 父から受け継いだルールに新たなルールを付け加えて「相乗りタクシー」の歴史はさらに続いていく。小樽にはタクシーにまで伝統が詰まっている。

(まろ)


※本記事の内容は2016年2月時点の情報に基づいたものです。