時代の流れ
北一硝子三号館は、小樽市が観光の町として栄えるようになったころに、古い倉庫を再生していく最初の成功例として、小樽市都市景観賞や、小樽の歴史的建造物に指定されています。
元々の倉庫は木村倉庫社長、初代木村円吉によって明治24年に建てられたものです。当初は漁業用倉庫としてみがきニシンなど魚の加工品が納められていましたが、ニシン漁の衰退とともにさまざまな物資が納められるようになりました。
外壁に利用されている小樽軟石は断熱効果にすぐれ、倉庫の壁材としては最適のもので、建設当時のままのしっかりとした姿を残しています。
華美にさせすぎず、落ち着いた雰囲気を保ちながら店舗利用されている姿は、日常にいながら100年以上前の時代を感じることができるものです。
堺町通りに面した入り口から玄関をくぐっていくと、三号館洋のフロアと北一ホールの境の通路に入ることができます。昔はここを実際にトロッコが走っていたそうです。今でもその当時の面影を残すべくレールの姿をみることができます。
薄暗い空間の中でぼうっと明かりを灯すのは細やかなイルミネーションと趣のあるランプ。小樽特有の、まるで時間が戻ったような雰囲気を感じられる場所になっています。
私は小さい頃、よく家族で小樽へ出掛けていました。この三号館には何度も母と訪れており馴染みがありましたが、明治に建てられたものを再利用していることなど知らず、「暗くて寒くて、古臭い場所だなあ」と感じていました。子供の頃には分からなかった歴史の流れの素晴らしさ、暗い空間に輝くランプの幻想的な雰囲気の良さが、21歳になって徐々に分かってきた気がします。
この通路からつながる北一ホールは、北一硝子が経営する喫茶店なのですが、167個の石油ランプがゆらゆらと灯り、こちらも幻想的な雰囲気が感じられます。また開店時間に訪れると、ひとつひとつのランプに火を灯す作業を見ることができるそうです。幻想的な空間が完成するまでの過程を見るのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。
(坂)