みかん

私の父方の祖母は、小樽に住んでいる。
昔から「小樽のばあちゃん」と親しみ、長期休暇になると家族5人で、車で遊びに行っていた。

私が小学6年の夏休み、父が出張でいけないということで母と姉妹の4人でJRを使って向かった。
南小樽駅で降り、タクシーでぐんぐん山を登る。坂の多い町、小樽であるが、祖母の家は本当に山の頂上付近にある。

祖母の家につき、お昼時になると、「美味しいラーメン屋にいこう」と祖母が車を運転しながら提案した。

そのラーメン屋の名前は「みかん」。ラーメン屋なのにみかん?と不思議に思った記憶がある。
当時はただ単純に美味しいラーメンとだけ感じていた。

それから月日がたち、私は小樽商科大学に入学した。
祖母は元気だが、足が悪いため、老人ホームに入居している。

私は近くにいる祖母に入学式以来会うこともなく、大学生活を楽しんでいた。
そんなある日、部活の先輩が「おいしいラーメン屋があるから皆で食べに行こう」といった。

そのラーメン屋は、「みかん」だった。
私ははっとした。昔の記憶が蘇った。

後日私は、車を運転して祖母を迎えに行き、2人で「みかん」にいってラーメンを食べた。昔と変わらないこってりとした味。

変わったのは、私がJRではなく車で祖母を迎えに行き、助手席に乗せたことくらいだ。

大学生活も残り1年だ。
社会人になる前にもう一度祖母と思い出の味を食べに行きたいと思う。

(まー)


※本記事の内容は2016年2月時点の情報に基づいたものです。