朝焼けに染まる

わたしはめっぽう朝に弱く、早めに寝ても真昼間に起きたりする。
しかし、奇跡的に夜明けの直前に目が覚めることがある。そんなときは外に出て、朝焼けの見える場所に向かう。

小樽に来た当初、商大の寮に住んでいた。寮は地獄坂の一番上なのでとても景色がいい。そのときに偶然窓から見た朝焼けがとてもきれいで、以来、早起きした際に朝焼けを見るのが日課になっている。

夕日でもきれいだが小樽の朝日は海から出る。まだ多くの人が寝ている時間帯に外に出て、だんだん明るくなっていく小樽のまちを見る。いったい何人が、いま、この景色を見てるんだろう。夕焼けよりもきっと少ない。そんなプレミア感が魅力的だ。

小樽で朝焼けを見るには坂を登るのがいちばんだ。
寮のときは外に出ずとも見れたが、引っ越してからは窓からは見えなくなってしまった。それで、早起きした日は朝一で家を飛び出して近所の坂を登る。港までまっすぐ一望できるこの坂は普段通学する地獄坂よりもいっそう急だ。坂に慣れていても少しきつい。しかし、眠気も覚めない朝一の運動にはもってこいじゃないだろうか。

いちばん上まで登って後ろを振り向くと、もう少しで日の出だ。
切らした息を整えながら日の出を待つ。

だんだんと空が白んで濃い青だった空がオレンジと混ざる。太陽があたまを出して、視界がとてもまぶしくなる。早起きした満足感と、この朝焼けを見た数少ない人の中に自分がいるプレミアを感じる。いつの間にか眠かった目も冴える。

普段はこんな急な坂なかったらいいのに!なんて悪態をつく毎日だが、こうやって小樽のまちを見渡すときだけは、ここが小樽でよかったなと思えるのだ。

そしてご存知の通り小樽はやっぱり坂が多い、朝焼けスポットは坂の数だけあると思う。坂の上から見たことのある朝焼けは地獄坂と近所の坂だけだが、機会があったら旭展望台や、少し遠くの坂まで足を延ばしてみたいと思う。

(いわし)