雪と猫
小樽の街中を歩いていると時折猫に遭遇する。小樽は港町であるから、猫が多いのはそのためかもしれない。
彼らは集団でいることもあれば、一匹だけ佇んでいることも。彼らは飼い猫という割には出歩く範囲は広いが、野良猫というには小奇麗でいる。
私が初めて小樽で猫に出会ったのは「好きなドラマのロケ地だ!」と、初めて富岡教会に寄り道をした帰り道だった。
私は猫が好きだ。しかし、餌も寄越さぬ見知らぬ人間、しかも猫を触りたいと邪心に溢れている私のような人間などが近づこうものなら、猫は怪しんで直ぐに離れてしまう。どうにか触れ合えないものか。
そこで、猫に会った時には挨拶をすることにした。「何を馬鹿な」と思われるかもしれないが、カラスにはそれなりに挨拶が有効だったのだ。
その日からというもの、私は猫を見かけた路地をなるべく通るようにし、猫を見かけて周りに誰もいなければ、彼らに挨拶をするようになった。
ある冬の朝のこと、猫が一匹道に座っていた。こんな日はコタツで丸くなるものじゃないのかなどと思いつつ、私はいつものように挨拶をした。逃げられるかと思ったが動こうという気配がない。近づいても立ち上がることもない。ついに触ることのできる距離まで近づくことができた。
私は思い切って彼を撫でた。すると彼が立ち上がり、私の足にスリスリと体をこすりつけてきた。小樽に来てここまで猫と触れあえたのは初めてだ。彼はしばらくスリスリし続け、その間私は彼を撫でていた。
彼は私に甘えていたのだろうか。マーキングしていたのだろうか。暖をとっていたのだろうか。真意は彼にしか分からない。だが悪い気はしない。
この触れ合いの間に商大生5人程に追い抜かれていた。見られていたらちょっと恥ずかしい。写真を撮っても許されるだろうかと思い足元で撮りにくいながらにチャレンジしてみる。
カシャリ。その音を聞くと、彼はスルリと私の足を抜け出し、家と家の間へと消えてしまった。彼はカメラが嫌いだったようだ。
次に彼らと触れ合えるのはいつだろうか。
(R)