伊佐美屋本店

 伊佐美屋本店は国道5号線沿い、花園4丁目にあるそば店である。創業は昭和11年(1936年)。老舗の多い小樽のそば店でも古い方である。

 ちなみに、そば好きの私がこの「おたるくらし」でそば店の思い出を書かせていただくのは、「カネ作」「砂場」「両国」についで四軒目である。

 さて、話しは伊佐美屋本店に戻り・・・、まずはメニューから・・・。王道の温冷各種そば、丼物などのご飯類、そば絡みの定食類、さらにそば店独特のあっさり系ラーメンは人気がある。しかし、私の一押しはなんといってもカツカレーである!!!そば店なのにである・・・。

 花園公園通りに私のダンススクールがあった頃は、スタッフ分を含めてよくここから夕飯用に出前を取っていた。亡くなった先代の故宮下勝也さんが、原付に乗ってフルフェースのヘルメットをかぶったまま、岡持ちを持って2階まで上がってきたのを、今でも鮮明に覚えている。

 「毎度さん・・・、伊佐美屋です」
 「お父さん、ヘルメット取ったらどうなの・・・、暑いしょ・・・」
 「俺さ、顔でかいからヘルメット脱ぐの面倒くさいんだわ」
 そんな他愛のない短い会話を楽しみながら、出前を楽しんでいた。

 今は息子さんの三代目宮下勝博さんが、中心になりお母さん(先代の奥さん、先々代の娘さん)、二人のお姉さんで切り盛りしている。

 昔、先代勝也さんが元気だったころ、伊佐美屋さんのことを聞いたことがあった。
 「伊佐美屋さんは、支店と分店があるけど、何の違いなの???」
 「稲穂町の支店は、うちで長らく働いていた清水さんという人が、昭和42年(1967年)に暖簾分けという形で独立開店した店なんだ」
 「朝里の分店は、うちの女房の妹夫婦が昭和55年(1980年)に独立開店した店なわけよ・・・」
 「そうなんだ。さすが伊佐美屋さん、支店に分店とはすごいね!!!」と言うと
 「褒めたってなんも出ねえよ・・・。まあいい人たちを育てたのは、先代で創業者の山本常三郎オヤジだな・・・」
 とちょっと照れながら語っていたのを思い出す。

 先日、久しぶりに一人で昼時に行ってきた。相変わらずのほぼ満席状態であったのだが、好物のかしわそばを食し、至福の時を味わわせていただいた。

(斎藤仁)