中野植物園

 中野植物園は、北小樽の清水町にある私設の植物園である。開園が明治41年(1908年)という事なので、一世紀を優に超える歴史を誇っている。

 この中野植物園に私は一度だけ入った事がある。確か記憶の中では40年以上前の高校生の頃だった。古ぼけた遊具があり、グラウンドとは言えないが芝生の広場があり等々・・・。

 植物園という、小学4年時の札幌市内見学旅行で訪れた札幌北大植物園を想像していた身としては、なんとも拍子抜けした気分だったことが思い出される。

 それが最近、ノスタルジックな雰囲気、時が止まったような不思議な空間として雑誌で大いに取り上げられている。北海道や小樽のローカルタウン誌などにも多く掲載されていて、小樽関連の記事が記載されていると欠かさず購入するようにしている。さらにネット検索してみると、いろいろな写真が出てくる・・・。四季折々の色合いと相まって、何とも幻想的な写真が多かったことか。

 早速、ある日の朝、愛犬を車に乗せて中野植物園界隈を散歩してみた。街中に住んでいると、同じ市内とはいえ、私にとってなかなか見慣れない風景に出会うことが多々ある。

 桜陽高校下にあった玉屋食品工場跡に車を停めて、中野植物園方面へのお散歩を開始した。梅源線のバス通りが広くなったり狭くなったりしながら中野植物園前に到着し、件の写真を撮らせてもらった。

 そうすると、早朝だというのに中から植物園を管理している中野さんご夫婦が出てきたので、いろいろとお話しをうかがった。

 元々、学術的な植物園というより、みんなが楽しめる場所というコンセプトでご先祖様が作ったものだという事、花見の時期には芸者を呼んでの宴会が数多く催された事、最盛期の昭和30年代は毎日千人以上の入場者があった事などを教えてくれた。

 40年以上前の私が、北大植物園と比較してしまったのは、根本的に間違いであったことがようやく理解できたわけである。

 中野植物園と検索すると出てくる極彩色の遊具は、写真看板の左側に置かれてあった。なんでも大正時代に作られ、何層にもペンキを塗られて今に至るとのことだ。小樽の不思議スポット中野植物園にロマンを感じずにはいられない。

(斎藤仁)