浄応寺

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 小樽仏教会所属六十七寺院中、五寺院しかない一級寺院(檀家数千軒以上)。これまで、このおたるくらしでは、四寺院の思い出をご紹介させていただいているが、最後に残った五つ目が石山町の浄土真宗東本願寺派の浄応寺である。

 私が初めて浄応寺という寺名を聞いたのは、高校2年の春であった。現住職島隆さんの弟さんと同級生となった時だった。1年の時には違うクラスであったその島君であったのだが、ギターの名手として学年では既に一部の音楽仲間から知られた存在となっていた。その彼と2年生で同級となったのだ。

 会話の中で、その島君は自分の家は浄応寺だと言ったのだが、高校生にとって、自分の生活圏以外の情報など無に等しく、大変申し訳ないが「知らないなぁー」と無下に答えてしまった苦い思い出がある。

 後に自動車免許を取り、色内小学校から手宮に抜ける坂を走行中、これが浄応寺だと教えられたのが、浄応寺との出会いであった。手宮富士の手宮側中腹にあり、急な坂道にあるので、必然的に頑丈で大きな石垣が、まるでお城のようだという印象を持ったものだった。

 時は経ち、浄応寺に関する色々な逸話を見聞する事となる。寺前の急坂が「浄応寺の坂」と呼ばれている事、大正13年(1924年)年末に起こった手宮駅構内火薬爆発事故の慰霊碑がある事、昭和31年(1956年)に起こった色内小学校、石山中学校はじめ多くの家屋が焼け落ちた大火事で、手宮側への防波堤となり、木造家屋が立ち並ぶ手宮地区への延焼を防いだ事など・・・。

 最近は、テレビでお馴染みジャズのビッグバンド「原信夫とシャープス&フラッツ」のギタリストだった岩見淳三さんと奥様のジャズシンガーYayoi(やよい)さんとのジャズライブが恒例となっている。そこに住職の島隆さんもベースで加わったり、「小樽散歩案内」を出版しているウィルダネスの佐藤圭樹さんがギターで加わったりしているという。

 木造の本堂でのライブはきっと幻想的で、天井も高く音抜けや吸収もよく、変な残響音もないのだろうと思う。残念ながらお邪魔したことはないのだが・・・。

 前述、弟島君がギターの名手だったのは、兄貴の影響だったのだなと改めて思ったりしている。

(斎藤仁)

※記事初出時、誤字がありましたので修正しております。