「チン」という音とラーメン

hacchintei

 小樽の食べ物というと、多くの人々が寿司というだろう。もちろん、小樽の寿司は美味しい。でも小樽は寿司だけではない。今、自分が一番はまっている食べ物はラーメンである。

 八珍亭自体はすこし目立たない場所にあるため、最初は行くのに苦労したが、一回行ってからは行きやすい場所だと考える。
 初めて店に行ったのは雪が降った夜だった。店に入る前に個人ブログに載せるための写真を撮っていたら、中から店主さんが出てきた。閉店かと思いためらっていたら、「どうぞ」と言われたので安心した。店の中はとても暖かった。7時過ぎだったので客は私一人だった。

 どれを注文するか迷っていたら、店主さんが「ラーメンがおすすめだな。特にダールら~めんは今まで50万食も売れたよ。それと増量が無料なんだけどする?」と言われ、それにすることにした。ら~めんはあんが入っていてとろみがあり、麺も柔らかくて消化しやすかった。私は猫舌なので小皿をもらい、ゆっくりと食べた。

 食べながら周りを見たら、壁に学生だと100円安くなると書かれていた。それで「今食べているラーメンにも学割が付きますか?」と聞いたら「学生さんかい、もちろんできるよ」と言われた。一人で来たのでさびしそうに見えたのか私に話かけてくれた。
 「どうやって来たのかい?」「外国人なのに小樽に住んでいるの?日本には長くいたの?」「雪も多くて、冬は寒いよね」のような雑談から、「店を開いたのが今年で32年目なんだ」とか「うちの息子が東京で働いているけど、窓に張ってある紙をプリントしてくれたのさ」とかのような話まで…。

 食べ終わって勘定するとき、さっきから気になっていたことについて聞いた。「さっきから“チン”という音が時々するんですが、何の音ですか」と「ああ、それはあれだよ。麺をゆでながら別のことをしていると、だめだろう?だから、時間になると音がなるようにしたのさ」と答えてくれた。

 他の店でもそうやっているかは知らないが、そのような点で誠意が感じられて良かったと思う。そういうものからも誠意が感じられ、人を満足させる。小樽の別の店を行っても、このような誠意が感じられて、満足した。日本の店の特性かも知れないが、それが人々を満足させるのだろう。

(CJ)