北炭ローダーを照らす朝日

sunrise20

「これ、高架桟橋の跡じゃないよ。」
「え〜!マジですか?ずっと高架桟橋の基礎部分だと思ってました。」

ホーマックの裏にある緑地から見えるコンクリート製の何かの基礎のようなもの。ずっと高架桟橋の遺構だと信じていた。ネットではよくそんな書き込みを見かける。

高架桟橋とは明治末期、石炭を船に積み出すため海上に造られた、長さ300m近い巨大な木製の桟橋のこと。昔の小樽を紹介する本などにも写真が載っているし、総合博物館には模型もあるのでご存知の方も多いはず。

その間違いを教えてくれたのは「写真で辿る小樽」や「小樽散歩案内」の著作者である佐藤圭樹さん。(佐藤さんについては「佐藤圭樹さん」の記事を参照していただきたい。)

うーん、そうだったのか…。でも間違いに気がついてよかった。
それにしても、勘違いしている人がなんと多いことか。

このコンクリート製の基礎部分、実は北海道炭礦汽船のローダー跡だそうだ。戦後に造られた石炭荷役施設だ。確かに高架桟橋にしては位置がおかしい。今でも残るレンガの擁壁の上を線路が走っていたはずだから、ゆるくカーブを描いても、この位置には来ない。

総合博物館に高架桟橋の位置を確認したところ、今はタンク群があるあたりに高架桟橋はあったそうだ。ちなみに「写真で辿る小樽」には、高架桟橋の跡と、このローダーとが写った写真が掲載されているのでそれが参考になる。

高架桟橋の跡ではないのがちょっと残念だが、それでもこのコンクリート基礎は、朝日に照らされるとなかなかいい雰囲気。役目を終えてもずっと風雨に耐え、今では草が生え、羽を休めるカモメたちの憩いの場所になっている。人が作ったものはやがて朽ちて自然に帰っていく、そんなイメージを抱かせてくれる場所だ。

小樽港は冬の間に山が邪魔をして、海に映る朝日が見られる場所が少なくなるのだが、この場所は南東に向いているため、逆に春分から秋分の頃までは日の出が見づらい場所だ。

この写真は11月頃のものなので、ちょうどいい位置に日が昇っているが、春が近くなってくる今の時期はそろそろ厳しくなってくる頃。「北炭ローダー」と朝日のコラボは、秋のお楽しみに取っておくことにしよう。

(まがらりか)