海に映る天狗山

tenguyama_and_central_otaru

雪あかりの路が始まって9日目の土曜日、車を走らせていると天狗山の方が妙に明るいのが目に入った。普段もナイターをやっている時は明るく見えるのだが、この日はそれよりも明るい。「きっと雪あかりの路をやっているからだな」と思ったが、どうもそれだけではないようだった。薄いベールのような雲が山頂付近にかかっていて、スキー場の光を反射してなおさら明るく見えるらしい。

雪あかりの路ではオブジェ作りのボランティアをしていて、毎日のようにオブジェの修復作業があった。それもあって、他の会場を撮影してきた私は疲れがピークに達していたので、「今日はこれ以上の撮影はやめて、諦めて帰ろう」と思っていた。

自宅に向けて車を走らせると、国道からチラチラ見える天狗山がどうしても気になる。
「気になるんだから、しょうがない。」
国道から海に向かう道へ曲がり、色内ふ頭へ向かった。海から見える天狗山を撮ろうという作戦。

いつもなら、気がついてから車を走らせても、雲はどんどん動くのだから、撮影ポイントに着いた時には雲の形が変わっていたり、無くなっていたり、ひどい時は天狗山がすっぽり雲に隠れて見えなくなっていたりするのだ。

駄目元で行ってみた色内ふ頭は海上保安庁の船が静かに停泊しているだけだった。天狗山の方を見ると幸運なことに山頂付近には先ほど見たベールのような薄い雲がまだかかっていた。よくよく見ると、風がなかったために海面にはさざ波がほとんど立っていない。

三脚を立てる。カメラをセットして、天狗山に向けてシャッターを切る。カメラのモニターに浮き上がってきたのは、小樽の夜景とともに海に映り込んだぼんやりと光る雲だった。
こうして見ると、小樽の海と天狗山スキー場がいかに近いかがよくわかる。銭函にあるオーンズスキー場は天狗山よりもさらに海に近いが、海に映る姿は石狩の方まで足を伸ばさないと見られないようだ。未だにオーンズが海に映る場所が見つからない。

冬のスキー場も夏の海水浴場も、車で15分ほどで行くことができるのが小樽の魅力の一つだが、車で15分で海に映るスキー場が見られるのも魅力の一つと言えそうだ。

(まがらりか)