坂とスキー

ski_training

 小樽には多くの坂があり、その坂を上り下りするだけでも大変である。
 船見坂の近くに住んでいる私も大学に通うのに傾斜15度の坂を毎日上り下りしている。
 夏の暑い日には汗だくになり、冬の寒い日には道路が凍るので滑らないように注意しなければならない。百害あって一利なし!と思っていたのだが最近私の中でその考えがガラリと変わった。

 ある日、大学からの下校途中に、家の前にある坂を利用してスキー練習している親子を見つけたのだ。話を聞くと小学校3年生からスキー場のリフトに乗ってスキー授業するらしい。なるほど、そのためにその親子はスキーの練習をしていたのだ。
 私の地元は盆地でありウインタースポーツはスケートだった。(スキーも一応できるが)小樽は海と山の間に街があり、すぐ近くにスキー場もある。小樽の立地条件はスキーというウインタースポーツに適しているのだろう。(雪資源も豊富である)さらに小樽の街自体が坂に作られているので、その坂を利用すればわざわざスキー場まで行かなくてもスキーの練習をすることが出来る。また小樽の天狗山スキー場では日本海を一望しながらスキーを堪能できるというのだから、小樽はスキーヤーにとって最高の場所なのだろう。
 近くの坂でスキーを練習していた彼もいずれは天狗山スキー場のリフトを登り、日本海を見下ろしながら悠々と坂を下るのだろうか。

 滑って、登って、滑って、登ってを繰り返す。次第に体全体の動きが滑らかになり、彼はより遠くまで滑れるようになっていった。遠くまで滑った後は、笑顔で近づいてきて「さっきより遠くまで滑れてた?」と尋ねて来る。もう日が暮れ始めて、気温も低くなってきてもそんなのお構いなしで夢中でスキーの練習を繰り返していた。そんな彼は小樽の坂を上手く利用して生きている小樽市民の姿だった。「小樽の坂道もいいかもしれない」と感じた一日だった。今後の彼のスキー人生に期待するところである。

(爪楊枝)