励ましの坂
手宮のバスターミナルから煤田山の頂上にある末広中学校までは、904メートルあり、標高差は83メートル、最大斜度は24%あります。車ではあっという間の道のりも、徒歩では約20分かかります。
地域に住まう方々はこの坂に対して言い表せられない様々な想いがあります。この坂は、登りもさることながら、下りも大変です。特に、冬の雪が降った日などは滑りやすいので、体全体で足元に注意を払って下ります。「もしも滑って転んで、骨折でもしたらどうしよう。一度転んだら坂の下までスキーのように滑り落ちてしまいそうだ。」そんな思いから一歩一歩に全神経を集中して坂を下るのです。しかし、今度は帰りの登りが、また大変です。比較的ゆるやかなのは、手宮小学校のところまで。そこを過ぎると“心臓破りの坂”、まるで山登りでもしているような感じです。ハァハァと息を荒げ、背を丸め、うつむき加減にしてがんばって登っていきます。全身汗まみれのまさに「奮闘」なのです。
この坂を登った先に陸上競技場があります。中学高校と陸上部に所属していた私はほぼ毎日のように夏場はこの坂を登っていました。ただ登るだけでなく、時にはその坂が“地獄のトレーニング場”と化しました。自転車で登らされた日もありました。大会で予選落ちした時に走らされた坂ダッシュの辛さと悔しさは今でも忘れません。「絶対に強くなって見返してやる!」そう仲間たちと固く誓いました。
この坂を誰言うとなく「励ましの坂」と呼ぶそうです。「励ましの坂」とはよく命名したものだと思います。やけに親近感を感じるのは、陸上部時代に激しいトレーニングで汗を流し、辛く苦しいときお互いを励まし合って乗り越えた、まさに「励ましの坂」であることを肌で体験していたからかもしれません。そして、「励ましの坂」を登りつめると、目の前には洋々たる海原が広がっているのです。是非皆さんも夏場に一度「励ましの坂」を登ってみてはいかがでしょうか!
(二木 涼)