それぞれの思い出の坂

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 小樽といえば坂の街、小樽の風景と言えば坂から見下ろした風景、というように考える人も多いだろう。私は小樽商科大学に通学しているということもあり、坂から見下ろした風景というと、学校から見下ろした風景や駅から海や運河の方角に向かう風景などを真っ先に思い浮かべる。

 しかしそれはどちらも小樽の西側から東側を向いた風景である。見える景色はおおよそ変わらない。よく小樽を紹介するパンフレットなどで目にする坂からの風景もまた、西側から東側を望む風景が多いように思われる。

 写真の風景は小樽の南側から海を見下ろした風景である。普段学校と駅とを往復しているだけでは見ることができない、いわば私が見ようと思わなければ見られないような角度からの風景である。この角度は、小樽を代表する複合施設とその奥に広がる広大な海や山、そして左側には北海道最大の都市札幌に続く道路というある意味では長い歴史の中で小樽が発展してきた様子をうかがい知ることのでき、西側から東側を眺めた時とはまた違う情緒あふれる美しい風景である。
 特に私がとりわけここからの景色が美しいと思った理由は、自分は坂の上、いわば山に登っているのにもかかわらず海を隔ててその奥にまた山があるということである。小樽の一風変わった地形とその歴史の発展を同時に眺めることができるのである。

 この景色を見ることのできる場所の近くには小樽水産高等学校があり、私が写真を撮った際にもこの坂道を歩いて通学している生徒何人かとすれ違った。私が坂から見下ろす風景といえば学校からの海に向かう風景を想像するように、この道を通学路として毎日歩いている生徒からすると、坂から見下ろした風景というとこのような風景を想像することであろう。

 山と海に囲まれている小樽にはたくさんの坂がある。当然ながらその坂の数だけ坂の上からの小樽がある。そして小樽市民の数だけ坂から見下ろす風景、いわば「坂から見下ろす小樽の風景」が存在することであろう。

(おおた)