館ブランシェ

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 小樽を代表する洋菓子店としてあげておかなければならないのが館ブランシェである。

 館ブランシェは2013年の12月に花園銀座商店街にオープンしたケーキ屋である。館ブランシェとしての歴史は1年と、かなり新しく感じられるが、その歴史は1936年までさかのぼる。

 「洋菓子の館」は1936年に喫茶店として創業された。当時の小樽は小樽港があったことから、札幌よりも栄えており、多くの文明人が集う場所であった。しかし、喫茶店という文化が根付いていなかった日本にはコーヒーを飲みながら静かに商談をしたり、また、読書をしたりするような空間がなかった。そこで、創業者である八代氏は「小樽にもフランスにあるような喫茶の文化をつくりたい」という思いから、洋菓子の館を創業した。

 創業当初の館はケーキ屋ではなかったのだが、その後、北海道で初めて苺のショートケーキを売り出し、喫茶店兼洋菓子店として余市や札幌にもその名を広めていった。北海道外でも知名度が高く、小樽といえば洋菓子の館と言われるほどの人気を誇るまでに成長した。小樽市民の友達も幼い頃は毎回、誕生日を館のケーキでお祝いしていたそうだ。
 しかし、2013年5月、77年の歴史を刻んできた洋菓子の館が突然倒産した。この報道は小樽市民だけでなく道外のファンにも衝撃を与えた。幼い頃から親しんできた館のショートケーキでクリスマスをお祝いすることはもうないのか…。誰もが諦め、絶望していた同年の冬、洋菓子の館が館ブランシェとして復活する。観光客に人気のイタリアンレストラン『カナーレ』や、『北海あぶりやき』を経営する市内の会社、「小樽運河株式会社」が洋菓子の館の名称を引き継いだのだ。

 小樽市民に復活を望む声が後を絶たなかったこと、小樽運河株式会社オーナーの「小樽の文化ともいえる館を無くしてはいけない!」という思いから、40年以上「洋菓子の館」の味を守り続けたケーキ職人を含む3名の菓子職人と共に再スタートした。倒産前までは小樽市内だけでなく、ウイングベイ小樽や札幌にも支店を構えていた洋菓子の館だが、小樽運河株式会社は館ブランシェを花園1丁目の本店のみでの営業に絞った。

 復活後の市民の反響は大きく、クリスマスには再オープンしてまだ1ヶ月も経っていなかったのにも関わらず、クリスマスケーキの予約が殺到した。中には館のケーキを求めて稚内からはるばるやってくる客もいたという話も聞いている。ケーキの味は倒産以前から変わらず、むしろ改良を重ねたことでより美味しくなったと市民から評判だ。

 リニューアルオープン当時は店頭でのケーキ販売のみを行っていたが、昨年の春には喫茶店も再開し、館ブランシェが再び憩いの場として市民に定着している。この人気のお店に小樽に来て行かない手はない。ぜひみなさんも館ブランシェの美味しいスイーツをご賞味あれ。

(おいかー)