旧第一銀行小樽支店
北のウォール街交差点の札幌側山側に、大正13年(1924年)築の旧第一銀行小樽支店がある。その後昭和40年代に「紳装」という、紳士服メーカーになった。そこは、コンピューター裁断機を使い、極力無駄な端布を出さないで、オーダー、イージーオーダー紳士服を廉価で提供することにより、一世を風靡した会社だった。
だが、時代の流れと共に量販店に凌駕されていき、経営悪化から倒産。その後、残った社員を中心に協同組合トップジェント紳装として再建され、現在はトップジェント・ファッション・コア(株)として今でも営業を続けている。
話しは戻り同じ頃、色内大通り側の向い、旧三菱銀行小樽支店(現小樽運河ターミナル)が「エルニー」という婦人アパレル工場となっていたので、多くの銀行が撤退し、服飾工場に変わって行った様をもじって、昭和40-50年代は北のウォール街が北のウール街になったと揶揄する者もいた。
この建物は、現役で工場として動いているので、一般公開はしていないが、私は一度だけ入れてもらったことがあった。他の大正・昭和初期の銀行建築と同じように、1-2階の吹き抜け、高い天井、立ち上げの高い階段、建具等を含め随所に昔ながらの面影を残していた。ちらっと覗けた吹き抜けの工場部分からは、アイロンの蒸気が立ち上がり、活発に動いている様が読み取れた。
北のウォール街界隈を、早朝、愛犬の散歩で訪れると、カメラを持った観光客のみなさんが写真を撮っている場面に出くわすことがある。ある内地からお越し頂いた小樽ファンのご夫婦は、この交差点から山側に向かっては、同じような高さの銀行建築が立ち並び、古き良き時代の街並みを彷彿とさせると言っていた。
私はなるほどとうなずき、奥さんと街並みを撮っていたご主人に、ご一緒にツーショットを撮りますよと声を掛けた。にこっと笑ったお二人の笑顔とありがとうございましたの言葉が脳裏に焼き付いている。
(斎藤仁)