かねさく

kanesaku

2014年8月、大正10年から続いていた、そば処かねさくが閉店した。柳川通りと龍宮通りの角に建ち、小樽市民、お昼の胃袋を支え続けたそばの名店の終焉であった。

そば好きの私も、かねさくさんには、妻を伴い何度か訪れたことがあった。ここのホッキのかき揚げは、たいそう有名だったそうだが、それを知らず毎回、好物のかしわそばを食していた。今となっては、少々残念だったと思っている。

ここは、社交ダンス華やかなりし頃の昭和30年代、コトセというダンスホールであった。
オタルに14~15軒のダンスホールがあった時代である。人生の先輩方に、柳川通りにコトセというホールがあったという話は、聞いてはいたが、まさか、このかねさくさんがその場所だったとは、露ほども思わなかったし、誰も教えてくれなかった。

その後、昭和40年代には同名のコトセ劇場という単独映画館になり、32年前に映画館閉館と共に、かねさくさんが、国道沿いから移転して来たと言う。

日本は東西で食文化が大きく変わると言われる。まあ気候風土も違うので、当たり前のことであるのだが・・・。よく知られているところで、お雑煮の餅の形が丸か角か、家庭でのカレーライスの肉は、ポークかビーフか。味噌は赤か白か、そしてうどんかそばか。

北海道はもとより、小樽はうどん店より、そば店が多いのはご存じの通り。昔から、そば店のメニューに鍋焼きうどん等もあるので、そばとうどんは、共存共栄ということなのかもしれない。ちなみに、関西旅行した際うどん店に入ると、メニューの隅にそばが記載されていたのを思い出す。

近年、大手うどんチェーン店が、臨港線にオープンし、食の国境(くにざかい)もなくなってきたが、やはり私はそばが好きだ。返す返すも悔やまれるのは、かねさくさんの、ホッキのかき揚げだ。食べたかったなあ。

(斎藤仁)