旭展望台
5月になるとようやくほとんど雪も解け、暖かい日が多くなってきます。
まず、クロッカスやフクジュソウが咲き、白や茶ばかりだった景色に鮮やかな色がつきます。これは何度経験しても感動の瞬間です。景色に色が戻ったことに、そして自然の色彩の美しさに、心を打たれます。暖かい日が続けば、あっという間に、モクレン、桜と梅にチューリップ、水仙などが一斉に咲きみだれ、賑やかな春が訪れます。この季節感は日本のほかの地域とはずいぶん違ったものだと思います。
山に入ると春の山菜に出合えます。フキやワラビ、運が良ければウドを見つけることもできます。また、可憐な紫の花をつけるカタクリも群れを成して咲いています。カタクリやイチゲの仲間は、早春のほんの少しの間に、花を咲かせ、葉を広げ、やがて実を結び、新緑のころには地面の上に見える部分はすっかり姿を消してしまう様子から、「スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)」と呼ばれるそうです。「エフェメラル」は,「カゲロウ(Ephemera)」のように短命のもののことで、直訳すると「春のはかないいのち」となります。なんとも美しい表現です。
うかうかしていると過ぎてしまうのは花ばかりではありません。木々の新緑も、すぐに青々と力強い緑に変わってしまいます。柔らかい新緑の美しさを楽しめるのは、ほんの一時です。小樽市の木にも指定されているシラカバは、新緑の時期が最も美しいのではないでしょうか。
商大通りを上り、商業高校の向かいの道を右に入ると、旭展望台に出ます。頂上に着くまでの道路も、木のトンネルを通るようで清々しく、展望台付近では遊歩道も整備されており、気軽に森林浴が楽しめます。シラカバ並木があちこちに見られ、新緑の時期は、白い幹に柔らかい黄緑のレースがかかったようなその姿が、静かな感動を与えてくれます。
展望台に行きつくには、もう一つコースがあります。西綾中学校付近の遊歩道や船見坂の上の遊歩道から登山ができるのです。登山と言っても30分ほどで展望台まで行ける手軽なものです。鳥の声を聴きながら頂上まで行くのもお勧めです。
頂上には小林多喜二の文学碑が静かに立っています。
(川)
*カタクリについては、長谷川哲雄著「野の花のこみち」(岩崎書店)を参考にしました。
*旭展望台周辺遊歩道:http://www.city.otaru.lg.jp/kankou/osusume/sizen/asaten_yuhodo/