山を眺める紅葉橋の坂

momijibashinosaka

 小樽には地獄坂のようにどこまでも続く上り坂もあれば、上った後に下りがあるような小高い丘にできた坂もある。

 私は小樽駅と大学の間(いわゆる「中腹」)にアパートを借りて住んでいるが、高校時代の友人は国道沿いの「下界」に住んでいた。友人の家に行くには地獄坂をまっすぐ下って高架下を通り国道沿いを進むか、市民会館のある小高い丘を通って進むしかなかった。私の家が中腹の中でも地獄坂から少し外れたところにあったため、この市民会館のある小高い丘を通るルートで通っていた。

 高校時代のつながりは深く、入学したころはシラバスを持ち寄って履修相談をし、部活動で忙しくなると日頃の愚痴を並べるために集まることもあった。次の日も1講からあることが多く、泊まるよりも夜中に帰宅することが多かった。

 学校終わりに友人の家に向かう途中、いつもこの紅葉橋の坂を上る。そして友人の家から帰る夜中にはこの坂を下る。しかし、紅葉橋の坂は商大がある山と逆向きの傾斜をしているため、紅葉橋の坂を下った後には自宅までまた上り坂が続いているのである。

 夏は汗をかきながらこの坂を上る。友人と語らった後に下るのだが、夜風は涼しく坂の上から見る山沿いの家々と満天の星空は素晴らしい。山から海を見下ろす景色ばかり注目される小樽だが、こうした山を眺める景色というのも悪くない。

 冬になれば小樽の坂は雪で埋め尽くされるがそれはこの坂も例外ではない。バスも1時間に1本か2本しか通らないような道なので前の日が雪なら歩道が除雪されていないことがほとんどで、道も狭く車が来ないか確認しながら車道を歩くのが常だった。

 車も人もなかなか通らない坂だが、穏やかに小樽を感じることができる場所である。

(あきよし)