旅路
NHK朝の連ドラが絶好調である。昨年度前期「あまちゃん」、後期「ごちそうさん」ともに、毎回視聴率20%を超えた。今年度後期9月から始まる「まっさん」は、小樽の隣町、余市のニッカウヰスキー創設者竹鶴政孝氏夫人、リタさんをモデルに作られるという。余市町は、行政、商工会あげて、余市を売り込む千載一遇のチャンスと、息巻いている。
連ドラ草創期に、小樽を舞台にした作品があった。昭和42年4月から翌年の3月まで放送された、平岩弓枝の原作で、国鉄職員家族の生活を描いた、大正・昭和期の愛情物語「旅路」がそれである。あるいは覚えている方も多いかもしれない。
当時は、どの家庭も、時計代わりに連ドラを見ていて、視聴率も40-50%という、今では考えられない、とてつもない数字を叩き出していた。今のように半期毎の作品ではなく、一年通しの作品だった。朝8時15分からの本放送、昼12時45分からの再放送。ビデオも無く、録りだめで週末一気に見ることなど、とうていできなかった。
まだ私は小学生で、小学校が夏時間になる前期の間は全編見ることができなかったが、冬時間になると8時半までしっかり見ることができた。なにしろ一週間の総時間では大河ドラマより長く、それが一年間続くわけだから、1-2話飛ばしても、十分ストーリー展開にはついていけた。
「旅路」がどんなドラマであったか、具体的な内容は、小学生だったこともあり、ほとんど覚えていないが、「旅路」の微かな記憶が2、3残っている。主演のヒロインが日色ともゑ、その相手役が、水戸黄門の格さん役で有名な横内正だったこと、この横内演じる「室伏(むろぶせ)雄一郎」か、その父親のどちらかが勤めていたのが、塩谷駅だったこと。小学生の行動範囲は狭いので、母親にこのドラマは小樽の塩谷が舞台だよと言われても、あまりピンとこなかったこともおぼろげながら覚えている。残念ながら、微かな記憶はこの辺りまで・・・。
もし「旅路」が今放映されたなら、朝ドラご当地巡りとか、朝ドラツアーと称し、ファンが押し寄せたのでは!!! と勝手に想像を巡らせる。もっともこの作品の時代設定は、塩谷駅が、他の函館本線のローカル駅と同様、無人駅になる前である。無人駅では大した経済波及効果もないか、とも思ったりする。
ちょうど同じ頃、小樽のご当地ソングとして名高い「小樽のひとよ」が鶴岡雅義と東京ロマンチカのデビューシングルとして歌われ、150万枚を超えるミリオンヒットとなった。小樽という地名を、全国に知らしめた歌である。この2番の歌詞にも、「・・・塩谷の浜辺・・・」と出てくる。もっとも、当時のテレビ歌番組では、時間の関係で、1番と3番を歌うことが多かったので、「・・・塩谷の浜辺・・・」は意外と知られていないが。
「旅路」にあやかり、東京ロマンチカが翌昭和43年に、「旅路のひとよ」というシングルを出した。だが、柳の下に2匹目のドジョウはいなかった。覚えている人は、ほとんどいないのではないかと思うが・・・。
(斎藤 仁)