住吉神社の地下トンネル

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「住吉神社には地下トンネルがある」

と聞いたのは、いつだったか。中学生の頃か、高校生になってからか・・・。
悠久の昔、誰から聞いたかも、記憶にないが、地下トンネルという響きに、少年の心は、くすぐられた。

この話は、本当だろうか?
作り話、都市伝説ではないのか??
あるのなら、どこにつながっているのか???
何のためにつくったのか????

疑問は増すばかりだった!!!

私は、この地下トンネルに、昭和61年4月27日、今から28年前に遭遇することができた。

社務所より、本殿が丘上に建っているので、お互いの建物をつなぐのに、地下トンネルが造られたというわけだ。何のことは無い、坂の街小樽特有の建築方法で、潮陵高校の旧校舎にも、体育館と校舎をつなぐ一部地下トンネルがあった。

ただ、潮陵高校旧校舎との大きな違いは、潮陵のそれは、坑道の半分は外部に露出していて、いかにもコンクリート製の渡り廊下然としていたのに対し、住吉神社は、まさしくトンネル、坑道が外部に露出していないため、外からは、まったく見えない構造になっていた。

余談だが、そこは戦時中、近隣の小樽病院に入院している患者さんたちの、防空壕としても使われたという。

話は戻り、28年前の件だが、私の結婚式でのことであった。式前の描写を少々・・・。
社務所側、鉄の扉で閉じられていた、そのトンネルを神官がおもむろに開け

「みなさん、私に続いてお入り下さい」のお言葉。

トンネルの存在を知らなかった、両家の親戚たちは、声をあげることもできず、固唾を呑んで暗く、冷たいトンネル内に神官、媒酌人、新郎新婦に続いて、入っていった。

すのこを敷いた長いスロープを過ぎると、急な階段があった。地下で、さらにコンクリート壁ということもあり、社務所より、かなり低い温度に、不気味さは増すばかりだった。

階段を上りきり、本殿に入ると、眼前が開け、ぱあっと明るくなったのを、今でも覚えている。

住吉神社は7月の例大祭を「小樽祭り」と称し、小樽を代表する神社であることは、ご存知の通りだ。
写真の社務所は、1934年(昭和9年)築、今年で築80年ということになる。木造建築の社務所としては、道内最大規模だそうだ。

このトンネルを通りたくて、わざわざホテル付属の式場ではなく、住吉神社で結婚式を挙げたのだが、それ以来、トンネルには入っていない。ただ、いまだ健在であるとは、聞いている。

(斎藤仁)