スキーと小樽

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 小樽はスキーの聖地である。小樽のスキーには百年の歴史がある。小樽からスキー五輪代表選手も数多く輩出されている。第1回全日本スキー選手権は、なんと、今や住宅地となっている小樽の緑町で開催された。全日本スキー選手権は現在まで90年以上も続く日本最古のスキー大会で、小樽高商(小樽高等商業学校、現在の小樽商科大学)第2代校長・伴房次郎が開催に向けて尽力した大会である。

 小樽高商の構内には、ジャンプ台と合宿施設(昭和7年12月竣工)があった。写真がそれである。今では信じられない光景である。小樽高商から冬季五輪にジャンプ選手が2名参加している。

 競技スキーは当時小樽市内全域で盛んだった。小樽高商構内だけでなく、市内の公園の至る所にジャンプ台があった。古くから小樽に住んでいる年配の方は意外に良くご存じである。

 小樽高商初代校長・渡辺龍聖は小樽スキー倶楽部初代会長に就き、その発会式の挨拶で「体育奨励のための範を示すべし」と訓示した。以来、小樽高商、小樽商大は、体力と知力を兼ね備えた優秀な人材を、北海道のみならず中央にも送り続けている。

 小樽のスキーの歴史は小樽市民の生活史でもある。これまでスキーは小樽の人にとって手軽に心身を鍛えることのできる娯楽であり続けた。IT技術のおかげで娯楽が増えたのは良いことなのだろうが、問題も増えた。ストレスが人々の間に蔓延した。豊かな生活を謳歌している時こそ、心身を鍛えることが必要に思える。

 竹製のスキーを作り、昔ながらの一本杖スキーを体験してもらう試みが小樽市総合博物館で毎年行われている。こうした取り組みは、かつて小樽でスキーが盛んであったことを思い出させてくれる。スキーをもう一度やってみようと思うきっかけにもなるであろう。全国に先駆けてスキーが小樽にふたたび根付いてくれたらと切に願う。

(中川喜直)