祝・老舗復活!?名店は不死鳥の如く?

yakata_branche

平成25年12月15日。待ちに待った日がやって来た。

そう、この日は「館」改め「館ブランシェ」が晴れて営業再開した記念すべき日。
わたしが館さんの営業再開を初めて知ったのは、Facebook上にアップされた情報であったが、タクシーで花銀を流すたび、準備が着々と進んでいくのが見えた。

オープン前日の夜も花銀を繰り返し流したけど、その際にはお店の内部を覆っていたベールも取れて、スタッフの皆さんが甲斐甲斐しく準備をしているのが見え、思わず目頭が熱くなって来た。

その日は忘年会ラッシュだったということもあって、夜の花銀は大にぎわい。道行く人々もいったん館さんの前で足を止め、立ち話をしながら開店準備の様子を見守っていた。

そしていよいよオープン初日。昼過ぎにわたしの会社の忘年会があったが、終わったあと、堺町から一人でまっすぐ花銀へと足を運んだ。行き先は無論、館ブランシェさんである。

館ブランシェさんに着くと、以前と変わらぬセピア色の優しい光がお客様をお出迎え。
赤い制服を身に纏った売り子さん、黒服を着たコンシェルジュ、黒と白の制服のウエイターさん、ウエイトレスさんが総出でおもてなし。
わたしが着いたときには、お客様が店外にまであふれているという程ではなかったものの、店内で行列がくの字に折り重なるような感じで並んでいたのだ。
わたしも行列に並び、ゆっくり進みながら喫茶室で食べるケーキとお持ち帰り用のケーキを品定め。

やっと精算が終わり、待ちに待った喫茶室へ。
より暗いセピア色の内装と緋色の椅子、そしてステンドグラスがわたしたちを非日常の世界へといざなう。
この暗さが、またいい。今時こんな内装のシックな喫茶室はあまりお目にかかれない。そこは窓すらない、あずましい空間であった。
以前の館さんの時からこの喫茶室の雰囲気が大好きで、コーヒーをおかわりしながらささやかな贅沢をしたものである。お金の贅沢とはひと味ちがった、時間を消費するという贅沢を。

後日、わたしのタクシーにご乗車されたお客様に館再開の話をしたところ、こんなコメントが返ってきた。
「館さんは、昔ながらのケーキ作りをかたくなに守っているから、スポンジのしっかり感がまるで違うのよ。最新のケーキ作りについての研修会がよく東京で催されるけれど、館さんのスタッフはそんな研修会には行かないし、シロップやジャムだって自前で作るから、ありきたりでない、そこだけの美味しさを楽しめるのよね。」と。

そんな伝統の味が、経営難により一度途絶えかけたことを忘れてはいけない。
倒産後、離散してしまった職人さんを呼び戻し、同じ場所での再開に向けて尽力した小樽運河株式会社の社長さん、商標の再利用にご協力いただいた管財人さんには改めて感謝したい。

こうした復活劇が小樽には他にもある。中野のかりんとう、かね丁鍛冶の飯寿司、などなど。旧中野製菓の工場を買収し、かりんとう職人を呼び戻した木野商事さん。旧鍛冶商店の工場と職人さんを引き継いだ栗原恒次郎商店さん。小樽人たちの心意気、厚意、それに小樽を思う心がその陰にある。

復活劇はいつ聞いてもうれしい。これこそ「人情の街、小樽」を象徴するエピソードとして語り継ぐべきものだと思うし、われわれもまた、小樽に生き小樽を誇りに思う人間として応援し続けていきたいものである。

(轟 拓未)