煤田山の励ましの坂

hagemashinosaka

「煤田山(ばいでんやま)から上がる暖房の煙で下界は真っ黒だったさ」「煤田山?それどこの山、小樽にそんな山あるの?」
汽車乗りだったI氏との会話であるが、煤田山という地名を初めて聞いた時のことである。I氏は、煤田山の梅ケ枝町側、百花園に昭和42年に家を建てていた。その当時はまだ石炭ストーブが主流、煙突からのススと滑り止めに撒いたアクで、住宅街の雪はどこも薄汚れていた。

手宮公園のある小高い丘を煤田山という。頂上に末広中学校がある。手宮、高島地区の人達はみんな知っているが、小樽市民でもこの名前を知らない人は多い。

昔、この山の裾野を上り、旧手宮駅から北防波堤の手宮高架桟橋に石炭を満載した蒸気機関車がひっきりなしに行き来していた。その煙からついた名前なんじゃないの?と元・汽車乗りI氏は言っていたが、真偽のほどは定かではない。

この煤田山が今年8月NHKで全国放送された。山の中腹、手宮バスターミナルから末広中学校までの900メートル強の急坂を「励まし坂」と言うのだそうだ。初耳だった。私自身は中学時代、頂上にある手宮陸上競技場に行くのに何度も上った坂である。

この坂を自転車で一気に駆け上がる人が増えているのだそうだ。地元の人が自転車の乗り手に向かって頑張れ、頑張れと励ますところから付いた名前が励ましの坂。いい名前だ。なかなか足を一度も付けずに登りきる人は少ないようだ。それもそのはず、最大斜度24%、10メートル進むと2.4メートル上がる計算だ。普通の戸建なら、2階に道からはしごを使わず直接上るような高さだ。

坂の街小樽でも1位,2位を争うほどの急坂を、大人になってからは車でしか上がったことはなかったが、早速、我が愛犬シーちゃんと秋に散歩がてら上ってみた。

車を厩町の広瀬モータースに預け、海岸通り、手宮古代文字前を通過し、手宮バスターミナルへ。ここから一気に励まし坂に突入。何度も振り返り天狗山、手宮富士、荒巻山、手宮の街、小樽港を眺めながら、小樽稲荷神社でお参りをして、末広中学校まで完歩。自転車ではなく、徒歩での挑戦であったが、楽しい汗をかいた。

帰りは厩町の急坂を下りた。こちらも勾配20%ある坂だが・・・。なんとか無事広瀬モータースに戻って来た。

(斎藤仁)