天狗山
天狗山の紅葉も終わりに差し掛かってきたようです。
もう少しすると雪化粧をした姿が見られることでしょう。
山がそこにあり、その姿をみて季節を感じながら毎日過ごすことはとても贅沢ですね。
進学のため東京に住み始めた若かりし頃、どこにも山がなくて(天気がいいと富士山は見えるんだけど…)本当に泣きそうになりました。
天狗山といえば、これからのシーズンはもちろんウィンタースポーツです。我が家の子どもたちは、今からシーズンの到来を心待ちにしています。
しかし、夏の天狗山も魅力的です。
息子がまだ幼いころ、よく幼稚園に行きたくないとぐずり、困っていた時期がありました。ストレスのためかよく服の袖を噛んでボロボロにしました。
そんな時、夫が早朝、天狗山に息子を連れて行ったのです。夏の初めの天狗山はセミ天国で、まさに羽化真っ最中の幼虫が木に止まっていたり、「今から羽化しに行くところ」風なセミの幼虫が道路をよちよちと歩いていたりするのです。
これは大の虫好きの息子にはたまりません。
毎日のように、早くから夫をたたき起こしては天狗山に通い始めました。
その日、息子が、道路ゼミ(道路を歩いている幼虫を我が家ではこう呼んでいます)を2匹捕まえ、家に持ち帰りました。庭の木にとまらせておいたセミは、昼ごろにかけて羽化を始めました。いつも山にはついていかない私は、初めて見るセミの羽化にとても感動しながらその姿を見守りました。
1匹は見事に羽化を果たしました。
しかし、もう1匹が、殻に羽が引っ掛かったのか、羽化が進まなくなってしまいました。
みていると、どうにももどかしいのです。
ほんのちょっと助けてあげれば、羽化できそう。
ついに私は、引っ掛かっていたセミの羽を殻から引っ張り出しました。
その後、そのセミは羽がきちんと伸びきらず、結局飛び立つことができなかったのです。
本当に申し訳ないことをしたと思います。
でも、セミは、手を出さず見守ることの難しさと大切さを教えてくれました。
今も、それぞれの段階で自立へ向かって格闘する子どもたちを見るとき、このセミのことをいつも思い出すのです。
(川)10/29記