中野植物園

nakanosyokubutsuen00

その空間だけ、時の流れが止まったような場所が小樽にあるのをご存知ですか?

小学校の遠足で初めて訪れた『中野植物園』は、30年ぶりに訪れた今も、ほとんど変わっていませんでした。The Changing Same(変わりゆく変わらないもの)という言葉を、体感できる場所です。

旧国道5号線から続く坂道を上っていくと、住宅街の中に突然現れるその植物園。なんと私設の植物園で、開園は明治末、もう100年以上も経ちます。「歓迎中野植物園」という看板の醸し出す雰囲気、にこにこと出迎えてくれる管理人の方の気さくな空気に、なんだか懐かしさを感じながら、一歩足を踏み出すと、そこには不思議な世界が広がっています。

美しく珍しい花々が色とりどりに咲き誇るフラワーガーデンではありません。陽の光をさんさんと受ける温室があるのでもありません。足を踏み入れていくと、いつの間にか小さな森の中にいることに気がつきます。生い茂る木々や野草、苔むす路を楽しむことができ、深い緑の中から空を垣間見ながら、太陽の光を感じることの出来る場所です。

馬やうさぎ、象などをあしらった園内のカラフルな遊具は、サビもペンキ落ちもなく、時が止まったようなこの場所にありながら、なおも現役であることをしっかりと示しています。たっぷりと塗られた青や赤、黄などのペンキの色が鮮やかに今もこの植物園を彩り、子どもだった頃のわくわくする気持ちを思い出させてくれます。終戦により金属供出を免れたのだということも聞くと、感慨深いものがありますね。

時が止まったような、タイムスリップしたような感覚を覚える場所ですが、遊具や園内の植物を見ても、手入れが行き届いている様子がよくよくわかります。管理されている園主の温かな愛情を受けて、この植物園自体が、かつてのままを保ちながら、ゆっくりとした独自の時間が流れているのです。きっと、4月下旬から雪が降るまでの間、何度でも訪れてみたくなる場所です。

(朋)