小樽だけで会えるカメ
小学生の頃、家族で出掛けた時に小樽の近くを通ると、よくおたる水族館に行っていた。中学生になってからは家族で水族館に行くことは少なくなったが、最近、7年ぶりにおたる水族館を訪れた。
小学生の頃に印象に残っていたのは、イルカショーや、アザラシやペンギンを見たことだったが、今回特に心に残ったのは、入口の近くの大きな水槽で展示されていたウミガメの「太郎」だった。
私が太郎に興味を持ったのは、近くで水槽を見ていた家族連れが、カメについて話していたからだった。小さな男の子が、「ママ、かわいそうなカメさんだよ。」と母親に話しかけていた。
最初はどうしてそのカメが「かわいそう」なのか分からなかったが、水槽の前に貼られていた説明を読んで、片腕を失くしていることが分かった。
太郎は、2007年10月に道北の初山別村の海岸で保護された。保護当時から右の前肢は無く、両眼は閉じたままで身動きもほとんどなかったそうだ。しかし、おたる水族館での治療で元気を取り戻し、今は元気に泳いでいる。
説明には保護された当時の、怪我をして瀕死の状態だった太郎の写真も載っていた。とても痛々しい姿で衝撃を受けたが、同じカメとは思えないくらい元気に泳いでいる本物の太郎を見て安心した。
昔来た時にも、片腕がないカメがいたことをなんとなく思い出したが、その時は混んでいたのかじっくり見ていなかった。しかし、瀕死の状態から諦めずに回復して、片腕で自由に泳いでいる太郎をずっと眺めていると、「自分も頑張ろう」と勇気をもらうことができた。
太郎の話をしていた男の子は、以前おたる水族館に来た時に太郎を見たことを覚えていて、家族に教えていたのだと思う。太郎の姿は小さな男の子の心にも響いているのだと感じた。
このように、有名な観光スポットや歴史的建造物の他にも、小樽にしかない出会いはたくさんあると思う。
(ma)
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※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。
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写真:眞柄 利香