思い出の小樽運河

 私は小さいころ祖父とよくドライブをして観光を楽しんでいた。その中でもよく訪れていた町が小樽である。祖父が札幌に住んでいたということもあり、近くて観光地として有名な小樽に何回も連れて行ってくれた。そして私が毎回最も楽しみにしていた場所が小樽運河である。

 大量の水が美しく流れていくその様子は、真夏の暑い日でも我々を涼しませてくれた。海やプールなど水遊びが大好きな私にとって、小樽運河を眺めることを飽きることはなかった。
 しかし成長するにつれて小樽運河を訪れる回数は減っていき、高校生にもなると祖父と小樽運河を訪れることはなくなってしまった。
 小樽運河よりも美しい運河や海は世界中にたくさんあるし、友達と遊ぶことのほうが多くなっていき、祖父とドライブをして観光をすること自体無くなってしまったからである。

 しかし、大学受験期間を通して、私にとって小樽運河は大切な場所であると再認識することになる。高校三年にもなると私は第一志望であった小樽商科大学への入学を目指し勉強漬けの毎日を送っていた。私の祖父は「合格したら一人暮らしの家の下見ついでに運河行こうな。」と言って励ましてくれていた。

 しかし、私が大学受験を終える前に祖父は亡くなってしまった。もちろん当時私はとても悲しかった。亡くなった祖父にも大学合格した姿を見せたいと勉強を頑張り、合格することができた。そして、一人暮らしの家の下見の時に両親と私で小樽運河を訪れた。

 そこで母親は「おじいちゃんはあなたが小さいときに一緒に運河を訪れたときに毎回写真を撮って大切にしてたの知ってる?」と言って私にその写真を見せてきた。祖父は私を運河に連れていくと毎回喜んで誰よりも興奮していた様子がとても愛おしかったらしい。
 私はその写真を見て、祖父が私をとてもかわいがってくれていたと再認識し、もう一度祖父と小樽運河を見たかったと涙腺が緩んでしまった。この時、小樽運河は私にとってたくさんの思い出が詰まったたった一つの場所であることに気づかされた。

 きっとこのように多くの人たちの思い出の場所であるからこそ、小樽運河は今も多くの人から愛され続けている場所なのだろう。

(ジン)


※本記事の内容は2022年7月時点の情報に基づいたものです。

写真:眞柄 利香