商大通り

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国道5号線から小樽商大へ行く坂道の
ちょうど真ん中あたりにある「商大通り」。
地獄坂の手前にある坂である。
ここに当時学生だった僕の愛する社交場があった。

緑荘、国士無双。

雀荘ですが・・・

当時は、巷の社交場で社交を楽しむ学生がたくさんいた。
そして、僕もその社交を大いに楽しんだひとりだった。

僕が特に愛した社交場は「国士無双」であり、
僕が住むオンボロアパートのすぐそばにあった。
僕は、常日頃から人との交流を大切にする人間であるため、
陽の高いうちから、よくその社交場に顔を出していた。

・・・少し度を越していたかも知れない。

だけど僕は、
その社交場での友人との会話が楽しくて仕方なかった。
だから、みんなと話がしたくて、
「社交場」へ通っていたようなものだった。

その社交場のあった商大通り、
周りが住宅地であるので、いろいろな「お店」もあった。
その頃は、まだコンビニというものがほとんどなく、
お菓子、つまみ、清涼飲料水、大人の飲料水などの
ちょっとした買い物をする時は、その近辺にあるお店へ行った。

なかはら商店、まつい商店、いちしま商店、谷平商店・・・

どれもお世話になったお店だ。
何度も通うと、おじちゃん、おばちゃんに顔を覚えられ、
自然と会話が生まれる。
これが嬉しい。

おたるでのひとり暮らし。
パソコンも携帯もない時代。
僕の場合、電話すらなかった。
なので、数か月も親に連絡しないことなど、
しょっちゅうだった。
そんな中、「お店」での買い物の時の
「おじちゃん、おばちゃん」とのちょっとした会話の中に、
「親」を感じる事が何度かあった。

コンビニは確かに便利だけれども、
そういう思いを感じることはない・・・

僕はお金に困り、「谷平さん」で、
お米を500gで売ってもらったことがある。
おばちゃんは、
500gのお米をちっちゃな茶色の紙袋に入れて売ってくれた。
あの紙袋の小さな重さを、今でも覚えている。

商大通り。
僕は今でもあそこを通るたび、30年前の自分があの社交場へ、
あのお店へ入っていく姿が目に浮かぶ。

(みょうてん)