かまぼこは地元の味
「あれってかまぼこ屋さんかな…?」
家族で小樽に散歩に出かけた日だった。偶然見つけたのは大八栗原蒲鉾店というお店。あまり目立たない店構えなので、車だったら見逃していたかもしれない。
まだお昼前だったが、お腹をすかせた私たちはその店に立ち寄った。
「いらっしゃいませ!何にしますか?」「何個からでも大丈夫ですよ。」
店の落ち着いた外装とは打って変わって、元気な若い女の子の店員さんが笑顔で出迎えてくれた。
ふわぁっといい香りがする。並んでいたのは小さくてかわいらしい蒲鉾たち。値段もお手頃だ。駄菓子屋さんで買い物をするような気持ちになって、ついついたくさん買ってしまった。
歩きながら買った蒲鉾を食べた。ミニサイズで食べ歩きにぴったり、そして素朴で家庭的な味がする、懐かしく優しい味がした。
私のお気に入りはイカペッパー。隠れた名店を見つけたような気がして嬉しくなった。
その日は一日中小樽を歩き回り、いろんなものを食べた。そして、もうそろそろ帰ろうと思ったとき、私はまたイカペッパーが食べたくなった。そして、家族みんなで再びあの店へ。
「イカペッパーありますか?」
「ごめんなさい、もうなくなっちゃったんです。」
夕方に行くと人気の味は売り切れていた。ここは地元の人が多く訪れる店だったのだ。大正3年に創業された歴史のある店で、古くから地元の人とのつながりを大切にしている店なのだ。
考えてみると、あの優しい味は夕食の一品にもちょうどいい。おつまみにも最高だ(と父が言っていた)。きっとこのかまぼこは、小樽の家庭の味なのだなと思った。
小樽には地元に愛される店がたくさんある。
地元の人が多いこともあって、店の中では小樽の生活を知れたり、人の温かみを感じられるのも魅力の一つだ。観光地として有名な小樽だが、観光客の私でも飾らない日常に混ぜてもらったようなあたたかい気持ちになる。
小樽に行くときには、隠れた地元に愛される場所を見つけ、小樽の人々の日常に触れてみてほしい。
(ももたろう)
—
※本記事の内容は2020年8月時点の情報に基づいたものです。
—
写真:眞柄 利香