北浜橋

 写真の北浜橋は小樽運河に架かる4つの橋の一つである。札幌側から浅草橋、中央橋、龍宮橋と続き、この北浜橋は小樽運河が創建当時の面影を残す北運河地区にある唯一の橋でもある。

 さてこの北浜橋、今は歩行者専門となっている。海側には北海製罐工場がどんと構えていて、関係者以外は立ち入ることができない状態となっている。というか、以前から同じ状況で最近こうなったわけではない。

 つまり通行としての橋の機能は果たしていないのだ。北海製罐工場の裏側に通じる歩行者専用の橋という事になる。

 この北海製罐専用の北浜橋が、今は小樽運河上の重要な撮影スポットとなっている。人力車に乗った観光客が北海製罐工場やその先にある第三倉庫をバックに、運河に係留されている漁船やレジャーボートも含めた構図で、記念撮影に興じている姿を数多く見ることができる。

 小樽運河の写真を全国に発信している浅草橋からの風景や、小樽駅をまっすぐ下がった中央橋はよく知られた存在であるのだが、龍宮橋とこの北浜橋は余り観光客が訪れない小樽運河の穴場なのである。

 さて、話しは北浜橋に戻り、小樽運河の歴史を少々掘り返してみるとする。小樽運河は手宮側から造成されていった。今の運河公園側からである。既存の川などの幅を広げる開削型ではなく、海岸を埋め立ててゆく国内唯一の埋立方式で進められたのはよく知られている。

 手宮側に位置する北海製罐の敷地が早期に造成されていったので、運河造成と同時進行で北海製罐工場、倉庫も作られていったという経緯がある。

 運河に最初に架けられたこの北浜橋(当時のものではない)も当初は港側に通じていたとの記録がある。しかし、埋立地分譲で北海製罐の工場が建って行ったというから驚きだ。そうなら最初からここに橋を架けなくてもよかったはずなのに・・・。当時の市民もみんなそう思ったはずであるが・・・。

 百年の時を超えてやっと最近日の目を見ている観光橋としての北浜橋である。
 夏の夜長、ビール片手にこの北浜橋での静かなアコースティックライブを聞くのも乙なものと思うのは私だけではないと思うのだが・・・。

(斎藤仁)


※本記事の内容は2019年11月時点の情報に基づいたものです。