水晶あめ玉

sawanotsuyu_candy

明治44年から続くこだわりの味がある。ひとつのお店に一種類のあめしかないという珍しい光景がある。

向こう側が見えるほど透き通ったあめ玉。
一つ口に運ぶと、懐かしい味が口に広がる。
サンモール商店街を抜けて、花銀への信号を渡ろうとすると右前方に”水晶あめ玉”の看板が目に入る。
明治44年からたった一つ、“水晶あめ玉”だけを扱っている”澤の露本舗”。

引き戸を引いて狭い店内へ入る。
入ってすぐのショーケース。
昔の紙幣・硬貨や電卓などが並びまるで博物館のようだ。

少し奥へ行くと“水晶あめ玉”が並んでいる。
サイズが違ったり、缶ケースやプラスチックケースに入ったものがあるが中身はすべて同じものである。
購入するとお店の方が素早く包装紙に包んでくれる。
ちょっとした、心遣いがたまらなく嬉しいものだ。
袋はチャック式になっているので、持ち運びにも最適。
水あめを使わず、砂糖で作られたあめ玉は、綿あめのよう。
ふわっととろけ、ほんのり柑橘の香りがする。
私は初めて食べたとき、自宅への道のりでほとんど食べてしまった。

透き通る黄金色を見ると、小学校の時の理科の実験を思い出す。
アルミ箔に砂糖を入れて、アルコールランプで少しずつ溶かす。
この時、少し水を入れるのが上手に作るポイント。
沸々としてきても慌てずにゆっくりとかき混ぜる。
少し色がついてきたら、アルコールランプを離す。
すると黄金色に透き通った“べっこう飴”ができるのだ。
まわりが焦げ付かせてる中、綺麗に完成した喜びは大きかった。

あの時に食べたべっこう飴の味は今でも忘れられない。
家にはアルコールランプがないので、フライパンで作るしかない。
フライパンの方が余熱が大きく再現するのが難しい。
水晶あめ玉越しに眺めるのは、アルコールランプで熱して作った懐かしいあの味かもしれない。

(七)