喫茶さかい家

sakaiya

 観光客で賑わう堺町通りに、喫茶さかい家はある。ここは小樽市指定歴史的建造物第33号「旧久保商店」として登録されている。

 明治40年(1907年)に、小間物雑貨卸の久保商店として開業した・・・、と歴建案内板には記載されている。しかし、昭和20年代に近所に住まわれていた方から教えていただいた話では、戦後は加藤さんという方が、犬島商会という北海道最初の損害保険代理店として営業されていたと教えてくれた。その方が子供だったので、その保険屋さんが、創業者一族なのか、暖簾分けなのか、小樽支店なのかは分からないが・・・、とも教えてくれた。

 昭和58年(1983年)に北一硝子が堺町の旧木村倉庫に三号館をオープンさせたことにより、観光客が堺町通りに集まり出す黎明期と言える時期の、昭和60年(1985年)からここは営業している。

 和風商店の趣ある喫茶店として、当時より市民、観光客から大いに人気を博しているお店である。私も開店間もないころから、家内と何度も出かけたことがある。

 店に入ってすぐの金庫や神棚は犬島商会当時の物だという。外側は歴建だが、中に入るとガラッと現代的になるという建物も数多くある中での営業である。

 小樽に来られる観光客の方たちが異口同音に、ここはゆっくりと時間の流れる街だ、と表現する。まさにここが、それを体現できる場所の一つということになろうか!!!

 堺町では何を売っても商売になるといわれたバブリーな時期があったという。しかしそんな事が続くわけもなく、観光客、一見さんだけ相手の質の悪い業者は、淘汰されるということ。市民からも愛され、リピーターの多い札幌圏からのお客さんをも満足させるだけのクォリティーを、持っていなければならないということだ。

 堺町通りの小さなお土産屋、飲食店は、ご多分に漏れず経営者がコロコロ変わることも多々あるが、喫茶店という爆発的ブームの起きない職種で、30年に渡り歴建の趣を壊さずに、営業を続けていることに脱帽するばかりだ。

(斎藤仁)