寝ないで迎えた朝は眩しい
札幌から小樽に通う身からすると、朝の小樽は非常に珍しい光景である。
ましてや、それが徹夜明けだとすればなおさらだ。
そして、朝の小樽は美しい。
北海道の観光都市として名高い小樽に通うようになってもう3年が経つのだが、いわゆる札通生と呼ばれる身では、大学帰りに小樽観光なんてことはほとんどない。帰宅にかかる時間が長い分、やはり早く家に帰りたいという気持ちが強い。
そんな感じで、あまり友人と小樽散策なんてすることがなかったのだが、徹夜明けのテンションというものは恐ろしい。多分、ほとんどの人が経験したことのある謎の高揚感。私はそれに支配されていた。
夏の早朝、徹夜、そして水天宮に至る坂。
気が付けば私は同じく徹夜明けの友人を引き連れて坂を上っていた。
付き合わされた友人には悪いことをしたと思っている。だが、後悔はしていない。
水天宮から見えた朝の小樽は、普段自分が見ていた小樽と、どこか違う雰囲気を感じた。昇った朝日が眩しいのに、遠くはぼんやりと靄がかかっていて、どことなく幻想的な光景にも見える。境界の曖昧な空や海も、それに拍車をかけていた。
水天宮は高台にあって、上るのも下るのもとにかく色んな坂がある。全部の名前は知らないが、多分名前の無い坂もあるだろう。
地図も無しにこんなところに上ったために、帰り道がわからなくなったら困るので、行きも帰りも同じ坂を使ったが、高台から色んな坂を眺めて思う。
「あの坂を下りたら一体どこに出るのだろう」
坂から見える景色だけではなく、坂から続く道の先に想いを馳せながら、私は坂を下りたのだった。
地獄坂以外の坂もたまには良いものだ。
(滝樹)