うだつ
小樽の歴史的建造物には、うだつが残っている建物が数多くある。建物両袖の防火壁をうだつ(梲、卯建、宇立)と呼ぶ。
読者のみなさんの想像の通り、「うだつが上がらない」という慣用句の語源の一つと言われている。うだつを上げるためにはそれなりの出費が必要だったことから、これが上がっている家は比較的裕福な家に限られていた。というような意味合いだ。
私がこの壁がうだつだと教わったのは、今から35年ほど前、二十歳前後の頃、父の友人を車で送って行った時だった。
今の堺町通りを札幌方面に走っていると、
「ちょっとあの建物の両側を見てごらん、あの両側の出っ張った壁、何て言うか知っているかい」
「いえ、知りません」
「これが、うだつが上がらないの語源になった、うだつというのだよ」
「そうでしたか、これがうだつですか、勉強になります」
と、元社会科教員の友人は私に教えてくれたのだった。雑学好きの私としては、貴重なお話しをいただいたと感謝したものだった。まだ、堺町通りに北一硝子も商店街もなく、まだまだ問屋、商社街として機能していた時代であった。
残念ながら、このうだつ付の建物が、当時は今日、多くの観光客を呼び込むことになるなど、露ほども思わなかった。
札幌に通う学生だった私は、そのうだつが、札幌の建物には、ほとんど存在しない事に気づくのに、さほど時間はかからなかった。古い建物がないということなのだが・・・。
それ以来、小樽に来た友人にこのうだつのうんちくを話すようになった。
最後には「知らなかっただろ???」
雑学自慢の常套句を忘れずに・・・。
(斎藤仁)